寮に入った頃は、とても汚い相部屋にいた。
その部屋の廊下には、冷蔵庫がたくさん並んでいた。
「好きに使っていいよ」
そう言われた私は、飲み物を冷やそうと冷蔵庫を開けた。
所せましとモノが詰まっており、私の飲み物が入るスペースは無かった。
冷凍庫を空けてみた。
袋に入ったものがぎっしりと詰まっていた。
その袋に何が入っているのかは見ただけでは分からなかった。
「何が入っているんですか」と聞くこともなかった。
いくつもあった冷蔵庫だったが、ほぼすべてにモノが詰まっていた。
一体、この人は何をそんなに冷やしているんだろう、と思った。
冷蔵庫の扉を開けた瞬間に広がる、密集。空間の無さ。
あの違和感は忘れられるものではない。
寮に来て忘れ難い思い出の一つは、あの冷蔵庫の隊列と、その中身を占める謎のモノ達という光景だった。
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