私が入寮した部屋割りの相部屋の相手がその人だった。
その人との相部屋暮らしは快適とは全く言えなかった。
とにかく物が多く、寮の中でもかなり汚部屋の持ち主として有名だった。
私の生活スペースは、布団一枚分しかなかった。
これが吉田寮に入る試練なのか、と思ったものである。
その人から、ウイスキーについて色々と教わった記憶がある。
とにかく酒好きな人だった。
部屋に帰ってくると、いつも酒に酔っ払って眠っていた。
狭い汚い部屋で、その人の足にぶつかりながらドアを開けて入室していた。
その人には、ある書類の添削などでもお世話になった。
部屋は全然片づけないが、面倒見がいい人だった。
今でも時々、寮にやってくる。大好きなお酒を飲みながら、楽しそうに何かを語っている。
もう一度、その人と相部屋になるのはごめんだが、一緒に飲む酒は美味しい。
今はその人も、東京で暮らしているらしい。
私は東京に行っても、きっとその人の家には泊まらないだろう。
あの人との相部屋暮らしは、とりあえず今は、思い出の中だけで十分なのである。
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