その人と最初に出会ったのはいつだったか、どういう状況だったか、よく覚えていない。
何となく、時間の流れがどこかゆったりとしている人だった。
『コジコジ』という漫画が好きで、勧めてくれたので読んだ。
とても面白かった。
その人は、『コジコジ』の主人公とよく似ている。
サラッと厳しいことをごく稀に言うが、大抵のことは笑って、マイペースで過ごす。
その人が時々、「ノート」(吉田寮には所々に「ノート」が置いてあり、想い想いのことを書き連ねている。閲覧は寮生間では自由。)に日記めいたものを書いていた。そこには、悩みが書いてあったり、日々の感想が綴られていたりした。
そこから、その人の世界観、物の見方が垣間見えた。
私とは全然違う生き方をしている人だった。
その人といると、何となく、その世界観を共有できた気がした。
その人が就職で寮を離れる少し前に、行きつけのラーメン屋に連れて行った。
こんなところ、知らなかった。またこのラーメンを食べに戻ってくる、とその人は言った。
きっと、もし仮に、寮が無くなったとしても(そんなことにならないように色々と皆、頑張っている)、その人はラーメンを食べにここに戻ってくるのだろう。
『コジコジ』の名言にこういうのがある。
主人公が、「君は将来何になるの?」と訊かれる。
コジコジは、平然と「コジコジはコジコジだよ。生まれた時からずーっと、将来もコジコジはコジコジだよ」と答える。
その人も、きっと、コジコジと同じようにそう答えるだろう。
そんな風に思える人だった。
またラーメンを食べに行きたい。
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