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「忘れ難き人④/投稿者S」残り87日

その人と最初に出会ったのはいつだったか、どういう状況だったか、よく覚えていない。


何となく、時間の流れがどこかゆったりとしている人だった。


『コジコジ』という漫画が好きで、勧めてくれたので読んだ。


とても面白かった。


その人は、『コジコジ』の主人公とよく似ている。


サラッと厳しいことをごく稀に言うが、大抵のことは笑って、マイペースで過ごす。


その人が時々、「ノート」(吉田寮には所々に「ノート」が置いてあり、想い想いのことを書き連ねている。閲覧は寮生間では自由。)に日記めいたものを書いていた。そこには、悩みが書いてあったり、日々の感想が綴られていたりした。


そこから、その人の世界観、物の見方が垣間見えた。


私とは全然違う生き方をしている人だった。


その人といると、何となく、その世界観を共有できた気がした。


その人が就職で寮を離れる少し前に、行きつけのラーメン屋に連れて行った。


こんなところ、知らなかった。またこのラーメンを食べに戻ってくる、とその人は言った。


きっと、もし仮に、寮が無くなったとしても(そんなことにならないように色々と皆、頑張っている)、その人はラーメンを食べにここに戻ってくるのだろう。


『コジコジ』の名言にこういうのがある。

主人公が、「君は将来何になるの?」と訊かれる。

コジコジは、平然と「コジコジはコジコジだよ。生まれた時からずーっと、将来もコジコジはコジコジだよ」と答える。


その人も、きっと、コジコジと同じようにそう答えるだろう。


そんな風に思える人だった。


またラーメンを食べに行きたい。






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