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「蝉の抜け殻も寝息をたてる/投稿者:一寮生」残り86日

みなさんも知っているだろう



受付には、こたつが置かれている



こたつには、ある時には酒瓶がところ狭しと並ぶ。


またある時には、食べ残しのカップラーメンが残されている。



きょうは、気持ち良い昼下がり。


誰かが鼻歌を歌いながら、廊下を歩いている。


廊下の軋む音が聞こえてくる。


ゲーム部屋からは、ゲームのBGMが低騒音となり流れてくる。


食堂からは、怒鳴り声が風に乗って耳に入る。


窓ガラスは、割られたままになり、光の侵入を欲しいままにしている。


軋む音・BGM・怒鳴り声が、空白の昼を奏でている。


どうして、窓ガラスを誰も替えないのか。


受付けに、ぼくは座り、呆けている。


どうして、ぼくは、呆けていられるのか。



ぼくの祖父は、青春の情熱を、学生運動に燃やした。


父は、17歳で画家を目指し、単身パリへ旅立った。


飛んでいないぼくは、飛び立っていないぼくは、光の侵入に感じようとしている。


日常の幸せを。ねばならぬ、などという言葉とは無縁の幸せを。


まるで、翼はついているが、住み心地の良い地上を離れる必要はないと言うかのように。



友人が私に教えてくれた。食堂の怒鳴り声は、芝居部のそれであると。


友人は言った。怒鳴り声に驚かない。


こんな怒鳴り声も、寮では、昼下がりの平穏な景色に吸収されてしまうのだ、と。



なるほど、そう言われて見ればそうだなとぼくは思った。

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