みなさんも知っているだろう
受付には、こたつが置かれている
こたつには、ある時には酒瓶がところ狭しと並ぶ。
またある時には、食べ残しのカップラーメンが残されている。
きょうは、気持ち良い昼下がり。
誰かが鼻歌を歌いながら、廊下を歩いている。
廊下の軋む音が聞こえてくる。
ゲーム部屋からは、ゲームのBGMが低騒音となり流れてくる。
食堂からは、怒鳴り声が風に乗って耳に入る。
窓ガラスは、割られたままになり、光の侵入を欲しいままにしている。
軋む音・BGM・怒鳴り声が、空白の昼を奏でている。
どうして、窓ガラスを誰も替えないのか。
受付けに、ぼくは座り、呆けている。
どうして、ぼくは、呆けていられるのか。
ぼくの祖父は、青春の情熱を、学生運動に燃やした。
父は、17歳で画家を目指し、単身パリへ旅立った。
飛んでいないぼくは、飛び立っていないぼくは、光の侵入に感じようとしている。
日常の幸せを。ねばならぬ、などという言葉とは無縁の幸せを。
まるで、翼はついているが、住み心地の良い地上を離れる必要はないと言うかのように。
友人が私に教えてくれた。食堂の怒鳴り声は、芝居部のそれであると。
友人は言った。怒鳴り声に驚かない。
こんな怒鳴り声も、寮では、昼下がりの平穏な景色に吸収されてしまうのだ、と。
なるほど、そう言われて見ればそうだなとぼくは思った。
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